現代波佐見焼の礎を築いた男 森正洋先生

2014.12.21 Sunday

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    私は、デザインの世界には造詣がありません。
    陶磁器にもさほどの興味はありません。
     
    しかし、ナガオカケンメイさんが以下の本冒頭に紹介されているとおり、
    森先生の文章を読んでその熱に侵され、完全に森正洋先生のファンになりました。
    ケンメイさんが言う「昔のデザイナーの働き方」これを現代社会で
    やっているのは、鉄道デザイナーの水戸岡栄治さんでしょう。
    と語り出すと長くなりそうなので、前置きはこの辺で本題に入ります。

    現代市場で流通する波佐見焼の原型を作った人といっても過言ではない、
    第一回グッドデザイン賞受賞デザイナーである森正洋さんを、
    以下の著書からご紹介したいと思います。
    森正洋さんは、白山陶器のデザイナーでした。
    しかし、一介の雇われ人ではなく、社長からも自由にやっていいとお墨付きを与えらた人で、
    日本は元より世界中で陶芸デザインの指導にあたり、多くの弟子が陶磁器世界で活躍しています。
    しかし、その活動拠点は常に波佐見にあり、多くの人々を指導しながらも、
    病床で亡くなる直前までデザイン画を描き続けた「デザイン職人」でもあったそうです。

    森さんの珠玉の言葉がたくさん詰まったこの本は、
    デザインに興味がない人にも是非読んで欲しいと切に願います。
    厳しい言葉がたくさんある中に、なんと人情味が溢れているのでしょう。
    それが今でも森さんを慕っている人が多い理由であり、森さんの作品が売れ続ける理由なのです。
    以下、森さんの言葉を本文中から幾つかピックアップしてみました。

    ☆本文写真の本人直筆文章より
    ———————————
    陶磁器デザインという仕事は
    陶磁器を多くの人に使ってもらうために、
    社会で必要とする品種や品物を考え、
    使いがってや、形、色、模様や表現方法、作り方を工夫して、
    工場でつくられるように考案、設計したプロットタイプ・見本を
    創作する仕事です。
    2001.3 森正洋
    ———————————
    ☆本文中の森さんの言葉より(2009.2.14読売新聞掲載)
    ———————————
    デザインはいいから、新聞を読め。
    社会のことを学べ。
    我々がそこに物を提供しようとしている世の中の背景を探れ。
     
    美術などの本は全部買っていました。
    立ち読みはしてはいけないと思っていたし、
    東京にいればまだしも、
    田舎にいるとそういう情報に自分でお金を払って、
    今必要でなくても持っていて、
    いつか必要になったらそれを見られる状態に構えていない限り、
    本当の田舎者の人間になってしまいます。
    ———————————
    ☆本文中の森さんの言葉より(日立キャピタル発行 NOVA2003.7掲載)
    ———————————
    日用品は、展覧会用の見本をつくっただけでは何にもならない。
    価格が決まり、大量生産が始まって、初めて社会的存在になる。
    そこに到達するまでのさまざまな折衝や交渉、そしてかけひきと妥協。
    これも工芸の世界にはない面白さと苦労がある。
    ———————————
    ☆本文中の森さんの言葉より(PEN 2005.7.15 No.156 掲載)
    ———————————
    デザイナーには野生が必要。
    でないと新しいものは生み出せないんだよ。
     
    戦後の何もない時代を、身をもって体験しているからね。
    精神的にも飢えていたから、
    芸術論や民主主義について書かれた本を濫読していたんだよ。
    するとしだいに、日常生活で使われるモノの重要さがわかるようになった。
    頭じゃなくって、皮膚感でね。
    そうして、生活にいちばん必要な器、
    みんなが使う”生活の道具”のような器をデザインしたいと思った。
    ———————————
    挙げればきりがなく、すべての言葉を紹介したくなるのでこの辺りでやめておきます。
     
    森正洋さんは、佐賀県嬉野市の生まれで、有田工業学校の図案科に進み、
    陶芸家松本佩山先生に弟子入り、その後多摩美術大学を経て、学習研究社に勤務。
    長崎県窯業指導所(現長崎窯業技術センター)を経て、白山陶器へ入社。
    1960年に「G型しょうゆさし」で第一回グッドデザイン賞を受賞。

    1970年佐賀県立有田工業高校非常勤講師に就任(〜1975年)、
    1974年九州産業大学芸術学部教授に就任(〜1982年)、
    1975年愛知県立芸術大学非常勤講師に就任(〜1985年)、
    1980年九州芸術工科大学講師に就任(〜1982年)、
    1984年石川県立九谷焼技術研修所講師に就任(〜1993年)、
    1987年多治見市立陶磁器意匠研修所講師に就任(〜1995年)、
    1985年佐賀県立有田窯業大学校講師に就任(〜2005年)、
    1999年愛知県立芸術大学客員教授に就任(〜2005年)、

    上記に挙げたのは一定期間在籍された教育機関ですが、
    それ以外でも短期的な指導は国内外を問わず、とにかく多くの後輩指導に当たられています。
     
    森正洋さんがその仕事に打ち込んでいく意義がなんだったのか、
    この本だけでは到底計り知れませんが、この一言に集約されているのではないでしょうか。

    ものを通じて自分のメッセージを社会に出す、それがデザイン。

    森さんが亡くなってからまだ10年しか経っていません。
    しかしながら、これを実現できている日本人、日本企業がどれほど存在するでしょう。
    彼は、そんな未来への種を蒔きたくて、全世界を飛び回ったのではないでしょうか。

    波佐見が産み出したデザイン界の巨匠をその分野だけにしまっておくのは勿体ない。
    もっと多くの人々に、森正洋さんの遺したものを知って欲しいと心から思います。
    ちなみに、森さんデザイン作品は以下のオンラインショップで購入可能です。
    ウインドウショッピングだけでも是非!
    デザインモリコネクション

    JUGEMテーマ:アート・デザイン
    評価:
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    白山陶器
    ¥ 1,404
    (2010-08-10)
    コメント:知らぬ間に食卓にあるかもしれませんね。